腰痛を防ぐボディメカニクス――力任せをやめる移乗のコツ
連載:ナースの暮らし(第4回)
看護師の職業病ともいえる腰痛。移乗や体位変換の場面で腰を守るには、ボディメカニクスの理解が欠かせません。力に頼らない体の使い方を解説します。
腰痛は「力不足」ではない
看護師に腰痛が多いのは、体力がないからではありません。患者さんの移乗や体位変換など、腰に大きな負担がかかる動作を繰り返すことが原因です。力任せに持ち上げようとするほど腰は痛めやすくなります。鍵になるのが、力学的に理にかなった体の使い方、ボディメカニクスです。
ボディメカニクスの基本原則
支持基底面を広くとる
両足を前後・左右に開いて立つと、体を支える面積が広がり、安定します。足を揃えて立つより、はるかに姿勢が崩れにくくなります。
重心を低くする
膝を曲げて腰を落とし、重心を下げると安定性が増します。腰を曲げて上体だけを倒すのではなく、膝と股関節を使ってしゃがむ意識が、腰への負担を減らします。
対象に近づく
患者さんと自分の距離が離れるほど、腰にかかる負担は大きくなります。できるだけ体を近づけ、重心の距離を縮めることが基本です。
大きな筋肉を使う
腕や腰の一部だけで持ち上げようとせず、太ももなど大きな筋肉群を使うと、負担が分散されます。
てこや回転を利用する
持ち上げるより、水平方向に滑らせたり、体をブロックとして回転させたりするほうが、少ない力で動かせます。
移乗の場面での実践
- ベッドの高さを調整し、腰をかがめすぎない位置で作業する
- 患者さんに協力してもらえる部分は協力を得る
- 声をかけてタイミングを合わせ、急に動かさない
- スライディングシートや移乗ボードなどの福祉用具を活用する
道具に頼ることは手抜きではなく、自分と患者さん双方の安全を守る賢い選択です。
日頃のケアも大切
動作の工夫に加えて、体幹や下肢の筋力を保つこと、勤務中にこまめに姿勢を変えること、腰まわりを冷やさないことも予防に役立ちます。すでに痛みがあるときは無理をせず、悪化させないうちに対処することが肝心です。
腰は看護師にとって一生使い続ける大切な資本です。力ではなく理にかなった体の使い方を身につけることが、長く働き続けるための投資になります。
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